もののあわれ ~京都編 その2~

平安時代の文学作品の中で、「もののあわれ」と言ってまっさきに思い浮かべるのは、ほとんどの人が『源氏物語』でしょうか。 

その『源氏物語』の作者紫式部の史跡の一つ「廬山寺」も、京都のイメージにふさわしい一度は訪れてみたいお寺でした。

高校の古文の授業では、平安の王朝文化の二大作品として『源氏物語』と『枕草子』を本格的に学習し始めます。

けれど、机上の学習で物語の組み立て方、流れなどをひととおり頭の中に入れたとしても、修学旅行のコースに入っているわけでもなく、実際に作品を生み出した作者たちがどんな風に生きていたのか、その名残の場所を訪ねてみようと思わなければなかなか辿り着けないような場所です。

(「廬山寺」は、今の京都御所の東の寺町通という細い道から入りました。)

 

初めて訪れたのは、2008年。たまたまTVで「源氏物語絵巻修復作業」のドキュメンタリー番組を見たのですが、その中で「廬山寺」が紹介されていたのでした。

その場所で紫式部が生まれ育ったとされているのですが、本堂前には美しい日本庭園がありました。

苔の間に桔梗の花を散りばめたような植栽が印象的で、訪れた時もちょうど桔梗の花が満開の季節。苔の緑に青や紫の花の色が映えて、しばらくその美しい庭園をゆっくり眺めることができました。

 

二度目に訪れたのは、2011年。ちょうど節分の日でした。私はちっとも知らなかったのですが、このお寺は鬼踊りで有名だったのですね。

テレビ局のカメラまで入って、大勢の参拝客がいまかいまかと待っている中を、赤鬼、青鬼、黒鬼の3鬼がコミカルな動きで舞い踊りながら舞台へあがっていきます。

その後一般向けの豆まきが始まって、私も常備していた買物袋を頭の上に高くかざして、皆と一緒にワーワー言ってみたら、有難いことにだいぶ離れていたにも関わらず、2,3粒お豆が入りました。

 

観光客気分での節分参加でしたが、その2,3粒のお豆を家族で分け合って食べてみて、格別においしかったように記憶しています。

 

けれど、そんな和気あいあいとした穏やかな気分の新春の始まりが一瞬で暗くなってしまうような事が起こったのです。

節分翌月の3月に、あの東日本大震災が起きたのでした。